韓国ドラマ・『美男ですね』の二次小説サイトです。 テギョンとミニョのその後や、さまざまなシチュエーションでのハッピーエンド・ストーリーを描いていきたいと思います。
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もう一度ラブソングvol.026~それぞれの3年間⑤
「ミニョっ!!」
朝一のインターフォンで、応対に出たミニョがドアを開けるや否や飛び込んできた長身の女に半ば押し倒され、たたらを踏んだもののなんとかミニョは踏みとどまった。
派手な見かけによらず、姉御肌で人情家の女は、かなり無理な体勢でプルプル震えながら耐えているミニョの苦労にも気が付かず、伸し掛かってグイグイ締め付けてくる。
…く、苦しい~。
ほとんど、大蛇に絞殺されんばかりだ。
「…ヌナ、どうでもいいけど、ミニョ半分死にかけてっぞ」
ミニョの後ろ方、悠々出てきたミナムが苦笑している。
「あら?」
やっとミニョの息も絶え絶えな様子に気が付き、ガバッと身を起こしたワンが、今度はミニョを抱き起し、ガクガクと両肩を揺すぶった。
「ちょっと、大丈夫?ミニョ?」
「ワ、ワンさんご無沙汰してます」
「ん~、間抜けな仔犬のような、このお人好し顔!本当にミニョだわねぇ~。同じ顔してんのに、なんであんたたちこんなに印象が全然違うの?」
本当に、一時期は身代わりとなって他人を欺けていたのが不思議なほどだ。
男女の違いを抜きにしても、二人の雰囲気はあまりにも違っていた。
…まあ、いまは身長差もかなりあり、年齢も得て、プロとして本格的に活動していてミナムとミニョとではもう今更身代わりどころか、見間違うことさえ難しいが。
「この年になって女のミニョと間違われるのなんてごめんだけど、いまの言葉の中には俺への棘が含まれているように感じるのは俺の気のせい?」
にっこりと笑うミナムはやっぱり誰が見ても食わせ者だ。
「もちろん、棘だらけに決まってるじゃない」
それをガッツリ肯定して悪びれずにニヤリと笑うワンもまた、食わせ者には違いなかった。
だが、その食わせ者をただの優しいお節介な姉がわりにしてしまう魅力がミニョにはある。
「ああ、でもホント!この子ったら3年間もアフリカなんて遠い国に行ってたなんて。元気そうでよかったわ」
「オンニも。その節はご挨拶もちゃんとせずに、すいませんでした」
「そんなあ、いいのよ、そんなことは。あんたもいろいろ大変だったんだから」
ホロリとワンが涙ぐむ。
「ん~、でも、なんかあんたちょっと見ないうちにずいぶん痩せたんじゃないの?」
「そうでしょうか?」
「そうよ!前からなかった胸が、もっとなくなって、まるで洗濯板みたいじゃないのっ!?いまならサラシはいらないわね」
呆れたように言われて、さすがのミニョもガーンと凹む。
「…そ、それは、かなりショックです、、、。ダイエットになったかなあ、なんて少し嬉しかったんですけど」
「ええ?あんたなんて、元々痩せ型で華奢なんだから、逆にもっと肉がついてたっていいくらいよっ。アイドルじゃないんだから、女は少しふくよかなくらいの方がモテるのよ。逆にジェルミに見習わせたいくらいだわ~」
「あいつ、またアイス食ってたぜ」
「…あんたもでしょ?」
言われてフンといなすミナムも、元々ミニョと同じくほとんど太らないタチで、逆に薄いながらも均整の取れた筋肉質な肢体の持ち主だった。
「俺、太らねぇもん。ちゃんと、言われたトレーニングメニューこなしてるし。どう?」
「…まあ、確かにあんたはねぇ。ジェルミもけっこう運動好きだし、真面目にトレーニングもしてるのに、体質はどうしようもないものねぇ。不憫な子だわあ~」
大真面目に憐れみながらも、いざとなれば誰よりも容赦がないのは彼女なのだが。
「でも、ミニョ、見違えたわねぇ。色気はないのは相変わらずだけど、けっこう綺麗になったじゃない」
「そ、そうでしょうか?」
まともに褒められて、ミニョがポッと頬を染める。
同性とはいえ、人一倍オシャレで、たくさんの綺麗な女優やタレントたちを見てきたワンが褒めてくれるのはミニョ的にもとても嬉しい。
たとえお世辞にしても、面映ゆかった。
「髪の毛もちょっと伸びて、ずいぶん色素が薄くなったわねぇ。逆になんだか肌の色は真っ黒に焼けちゃってるけど。せっかく肌が白かったのにって残念なような、逆に健康的な感じもして悪くないかも」
髪の色は強烈なアフリカの陽ざしの下、ずいぶん赤茶けてしまった。
手入れなどできる環境ではなかったから、かなりパサついて荒れてしまっていたけれど、大人しく地味な印象のミニョを溌剌として明るい感じへと変えていた。
肌の色も確かに、健康的といえば健康的だ。
そうした見た目の変化が、ミニョほど顕著に過ぎ去った歳月を思わせる変化を遂げた人間は誰もいなくて、不思議な感慨をワンにもたらす。
…もう、三年もたったんだっけか。この子がいなくなって、ミナムが現れてから。
「オンニは相変わらずお綺麗です」
「ま、この子ったら、ずいぶん正直になって」
ツンと鼻先を突っつかれ、ふふふ、と笑いあう。
「しばらく、同じ事務所に勤める同僚ね。よろしくミニョ」
「よろしくお願いいたします、ワンさん」
「で?なに、ミナム、あんたも結局こっちで泊まってるわけ?」
二人が再会を喜び合っている間に、ミナムはさっさと居間へと戻り、ソファで寛いでいる。
「…けっこう、一人でも大丈夫そうじゃない?」
「まあね。大概のことは一人でできるよ。あとは風呂とか、荷物持つのが辛いくらい?」
実際、元々活発だったミナムは子供の頃に骨折も何回か経験していて、さすがに手と足を同時に怪我をしたことはなかったけれど、幸い手は利き手とは反対側、折った足とは反対側だったため、松葉杖を支えるのにも支障はない。
不便は不便だったけれど、誰かの介助がなければ何もできないと言うわけではなかった。
「こっちだって一応セキュリティは入ってるんだし、情報を流さなきゃ、俺がこっちにいたってバレるもんじゃないし、いいでしょ?」
「…まあ、兄弟だしねぇ。ミニョも女一人でこんな広いところに住んでいるより心強いか」
「なんだったら、ヌナも泊まってよ。俺もずっとこっちにいれるかわからないし」
「ん~」
思案するワンに、ミニョが慌てたように声をかける。
「え、いえっ!そんなご迷惑をおかけするわけにはいきませんっ!私は大丈夫ですっ」
「…いや、ミナムがいるうちはいいかなあって私も思うけど、確かに外部にこの宿舎のことが洩れてファンでも押し掛けると厄介なことになるから。どうにも、不測の事態でも起こるようだったら声かけてよ。ミニョも韓国に戻ってきたばかりで不慣れな仕事を押し付けられて心細いでしょ?」
「いえ…押し付けられたなんて」
「どうせ、フニやアン社長あたりがあんたのお人好しに付け込んでいいように丸め込んだんじゃない?」
ズバリと確信をついてくるのはさすがだ。
でも、今回はミナムも賛成していたし、ミニョに利がないわけでもなかった。
当面の職を手に入れて、分不相応ながら快適な住まいも確保されたのだ。
「マ室長や社長にはとても感謝しています」
「そうおぉ?」
ミニョ自身が穏やかに微笑んで、大きく頷くのだから、ワンには他に言いようもない。
まったく、あいつらにいいように使われないといいけど。
内心で心配しながら、腕時計を確認する。
「ま、ともかく。ミニョを拾って、宿舎にミナムを迎えに寄ってからスタジオに行く予定だったけど、あんたがこっちにいるんなら手間が省けたわね」
「テギョンさん、拾わないとダメなんじゃない?今日の歌番、一緒だろ?」
「ああ、テギョンは別口のポスター撮りがあって、先に宿舎出てるのよ。そうでなくても仕事セーブしてるあんたと違って、テギョンはほとんど事務所と仕事場の往復」
藪蛇のミナムが肩を竦め、聞かなかったフリをする。
「えっと、私はどうすれば?」
「あんたアフリカから戻ったばかりだったんですって?スーツなんてどうせ持ってないでしょ?」
「あ…、いえ、一応、現地でもNPO法人の現地事務所へ行かなければならない場合とか、政治家主催の慰問会とかあったので、それなりに」
「あら、そうだったの?まあ、でも、これから毎日出勤しなくちゃいけないし、こういう仕事だから、毎日同じ服ってわけにもいかないでしょ?社会人はスーツなんて何着あっても困らないものだし」
「はあ」
ミニョはワンが何を言いたいのかわからず、困惑しつつも大人しく頷く。
「ちょっと、待っててね。たくっ、男がいるっていうのに、男手に頼れないなんて」
ブツブツ言いながら何食わぬ顔のミナムを睨み付けつつ、ワンが玄関へと戻る。
何事だろうと思いながらも、待っていろと言われたので優雅に雑誌片手にお茶を啜る兄の横に座りつつ…。
「おっ」
「どうしたの?」
ミナムの声に気を引かれ、彼が凝視している雑誌へとミニョも視線を落とす。
「…っ!?」
「…テギョンさん、潔癖症のわりに、けっこうお盛んだよな」
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