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韓国ドラマ・『美男ですね』の二次小説サイトです。 テギョンとミニョのその後や、さまざまなシチュエーションでのハッピーエンド・ストーリーを描いていきたいと思います。

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もう一度ラブソングvol.025~それぞれの3年間④



 「婚約者…はちょっと気が早いんじゃないか?」
 シヌの冷静な指摘に、ジニョンが首を傾げる。
 「えー?そう??別に私も週刊誌のゴシップを全部信じているわけじゃないけど、実際に、何度かCMスポンサー主催のパーティとかにもパートナーとして二人で出席してるんでしょ?うちのシンも、二人でいるところを見かけたって言ってたわよ?」
 「ふ…ん、実家も絡んだ話題集めとか言って、けっこうテギョンさんも上手くやってんじゃん。相手の彼女の父親ってクラシック界でも著名なピアニストなんだろ?」
 「…音楽一家らしいね。テギョンとも、元々それなりに面識あったみたいだし、許嫁的な女性ではあるみたいだ」
 「わあ、すご~い、確か、テギョンさん、あの世界的な指揮者のファン・ギョンセさんの息子さんよね?やっぱりサラブレッドは違うわあ~。許嫁だなんて、今どき私の田舎でも聞かないわあ」
 「うちの方ではけっこうあるかな」
 「シヌさんとこは、釜山の旧家だろ?やっぱ、普通の家とはちょっと世界は違うよな」
 一同の盛り上がりをよそに、ミニョは今一話の中に入っていけなかった。
 …と、いうか、入っていきたいとも思えない。
 あまり聞きたくはない…いや、ありていにいえば聞きたくはないのに、妙に耳が聞きたくないはずの言葉を拾ってしまい、なんだかもやもやとした気分が湧き上がって、その場を立ち去りたいような、それでいて聞かずにもいられなかった。
 「…ミニョ?」
 そんなミニョの複雑な表情に、最初から気が付いていたジェルミが、他のメンツには気づかれないようにいつの間にかミニョの横へと移動してきて、そっと手を握る。
 ハッとミニョがジェルミを見返すと、心配そうな目がミニョを見ていた。
 「平気?ミニョ」
 「え?あ、な、何がですか?ジェルミ」
 「え…何がって、その、えっと、何だろう」
 無理にニッコリ笑うミニョのいじらしさが可哀想でなんとも、言いだしかねる。
 実はそんなミニョの様子何て、とっくに目敏いミナムやシヌは気が付いているんじゃないかと思いつつも、どのみちこの韓国に知れば、トップアイドルの彼らのこと、そうした噂は嫌でもミニョの耳に入ることは必然だった。
 それぐらいだったら、下手に歪んだ話を耳に入れるよりは…そう二人が思って、ジニョンの振ってきた話題に乗っているのはジェルミにも理解できる。
 けれど、急に精彩を欠いたミニョの気弱気な顔を見ていると、ジェルミは堪らなかった。
 …まだ、ミニョはテギョンさんが好きなのかな。俺だったら絶対にミニョを泣かせたりしないのに。テギョンさんだってきっとミニョがまだ好きなんじゃないの?本当は。
 そうは思いつつも、もうテギョンもミニョもいい大人。
 いい大人の恋愛ごとに他人が口を出すべきじゃない。
 そんなことはお人好しのジェルミだって十分にわかっていた。
 わかっていて、3年前のあの日、口出しをして、結局テギョンとミニョの淡く清潔な恋はあっさりと壊れてしまった。
 「ジェルミ、私、何か変ですか?」
 逆に問い返されて、ジェルミの方が言葉に詰まる。
 「い、いや、そ、そんなことないよ!ミニョは、今日もすっごく可愛いっ!」
 「えっ」
 思わずわけのわからない本音を吐いてしまい、面と向かって言われたミニョの方が赤面してしまう。
 「…おい、そこ、なに人の妹、口説いてんだ。いくら安全パイだからって、ちょっと図々しくねぇ?」
 「だ、誰が安全パイだっ!!!!」
 「誰?」
 ミナムがニヤニヤ笑いながら、シヌを見る。
 シヌが即答を避け、ジニョンを見て、ジニョンがミニョを。
 ミニョがキョトンとして、何気なく…本当に何気なくジェルミを見て…。
 「ミニョ~っ!ひどいよ~っ」
 「え?ええっ?な、何がです?え?」
 「ぶっーーーーーー!!」
 「くすくすくす」
 「…くくく」
 明るい笑いが一同を包み、
 「…楽しそうだな」
 鼻から下をマスクで多い、ゴーグルを装着したテギョンがハタキを片手に、ドア口に立ち、おどろおどろしい地を這う声音で一同を凍り付かせた。


 その後…アイドルにあるまじき変質者のごとき姿で現れたテギョンの叱咤によって、各所へと割り振られたメンツが馬車馬のように働かされたとか。
 口の端を歪めて冷笑するテギョンの恐ろしさは誰もが身に染みていて、ほとんど馴染みのないジニョンさえもが逆らい難いオーラですっかり萎縮させられ、結局その後一人の脱落者も出さず、当初の目的は果たされた。
 何度も逃げ出そうとしたミナムはテギョンの直接の管理下に置かれ、特に厳しく作業に従事させられたのは言うに及ばない。
 こうして、ミニョの当面の住まいは快適に修繕され、確保されたのである。


 …で、トリプルデートの行方は。
 「…ふざけるな。もうすぐライブも、日本ツアーも控えてるのに、余裕だな。そんなに余裕なら、断ってる仕事も全部入れてもらえ。ミナム、お前も怪我だなんだといっているわりに体力や暇を持て余してるようだから、俺がみっちりこの機会に仕事を振ってやる。次のライブの曲のうち2曲の作詞と、アルバムの編曲やれ」
 「ええっ!!勘弁して?!俺、ただでさえ、俺だけのシングルも出すとかで、怪我するまでそのプロモーションやらボイストレーニングでめちゃハードなスケジュール組まされてたんだからさっ!」
 「やれ」
 「ま、まあ、テギョンさん。ミナムもさ、まだ怪我したばかりだし」
 ついつい、いつも苛められているにも関わらず、庇わずにはいられない憐れなジェルミ。
 「お前もずいぶんデートだなんだと浮かれてるようだが、この間渡した新譜はもうマスターしたのか?」
 「…も、もちろんだよ!」
 「で?バリエーションバージョンの編曲は?」
 「えっと~、もうちょっとしたら出来上がるかなあ…なんて?ひっ」
 テギョンの一睨みで撃沈。
 残るシヌは…。
 「わかってるよ、ファン・テギョン。ふられている仕事はお前の期待以上の成果を出して見せる」
 「ふん、当たり前だ。お前のことだ、俺に余計なことを言わせないと思っているが?」
 テギョンの辛辣な信頼に苦笑を零しつつ、実際負けず嫌いな彼は、テギョンに失望されるようなヘマをするのは我慢ならないタチだった。
 そんな殺伐とした男たちの空気を遠巻きに眺めつつ、ジニョンとミニョは女同士の親交を深めた。
 見るともなしに、気が付かれないようにテギョンに視線を密かに何度も走らせつつ、
 『有名な音楽家の御嬢さんなんですって。テギョンさんと並んでいると美男美女ですっごいお似合い』
 何度も何度も、ジニョンに聞いた言葉を、いつの間にか反芻してしまう自分に戸惑いを隠せなかった。
 …もう、私とテギョンさんは何の関わりもないのに。

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